演技を始めると、お客さんの存在を忘れてしまうほど、あたしは役にのめりこんだ。



「夕鶴」は、鶴の恩返しを題材にした戯曲。



つまり、つうとは鶴の恩返しの鶴のこと。



お金に執着する人間と、お金を理解しようとしないつう。



あたしは、自分で感じたままのつうを、舞台の上で精一杯演じた。










幕が降りた瞬間、会場からものすごい拍手が起こった。



あたしは、役を演じきったばかりの達成感の中、目を閉じてその拍手を聞いた。


ここまで来るのにいろんなことがあった。



その様々な思い出が、今頭の中を次々と巡っていく。


目から自然と涙がこぼれ落ちた。



いろんな人に、感謝したい気持ちでいっぱいだった。


演技を指導してくれた先輩方、一緒に演じた仲間、裏方で頑張ってくれた人達、そして、辛いとき元気づけてくれた茜や松山君、家族のみんな。



本当にありがとう。



みんなのおかげで、こんなにたくさんの拍手をもらうことができたよ。