ミモザの朽ち木

ふと、見知らぬ三人連れが彼の目にとまった。


いつからそこにいたのか、三人連れはロータスの十メートルほど先に立ってミモザの木を見上げていた。

ひと組の夫婦とその娘、三人は家族のようだった。


ここに人が現れたことなんて今まであっただろうか?

彼は記憶を探ってみるが判然としない。

数え切れないほどの人間がここを訪れた気もするし、今日まで未踏の地だった気もする。


三人はミモザに近づいて幹に触れ、手を伸ばして指先で花房を撫で、ミモザの周りをひと回りしてから元の場所に戻り、再び樹冠を見上げた。


来訪者の様子を注意深く眺めていた彼は、運転席のドアを開けてロータスを降りると、ゆっくりとした歩調で三人に近づいて行った。