ミモザの朽ち木

家族三人で食事をした。

ごくありふれた団らんの風景。

一生、手にすることはないと思っていたささやかな幸せが、今ここにある。


食事をする流利子に目を取られて、なかなか箸が進まなかった。

女とは思えないほど大胆に食べ散らかされた焼き魚の皿を見て、ああ間違いなく流利子だ、と心の内で納得した。


ひかるは食事を終えてさっさと二階の自室に戻り、俺と流利子の二人きりになった。

流利子は頬杖をついてテレビを見ている。


「おい、流利子。一緒に入るか?」


「え? 入るってどういうこと?」


「……風呂だよ、風呂」


流利子はゴキブリの死骸でも発見したかのように顔をしかめた。


「気持ち悪いこと言わないで……」


あのころは毎日のように一緒に入ってたじゃないか、と言いそうになってやめた。

どうやら俺にとっては新鮮な憩いの時も、流利子にとってはそうでないらしい。

流利子の中には、今日まで家族と過ごしてきた十三年という歳月がきっちりと存在しているのだ。


俺は湯呑み茶碗を手に取り、歯がゆさを噛みしめながら一気に渋茶を飲み干した。