ミモザの朽ち木

そしてすべてが終わると、満足げな顔でパパは言った。


「これはパパとひかるのふたりだけの秘密だ。だから誰にも言っちゃいけない。ママにも絶対に話しちゃ駄目なんだ。ひかるは秘密を守れる子だな?」


その時のパパの目は、人間のものじゃないように思えた。

あたしはそれを見て、昆虫採集で捕まえた虫の眼球を思い出していた。


「ひかるは秘密を守れる子だな?」


もう一度パパが言う。


ぐったりとベッドに横たわったあたしは、涙でぼやけたパパの顔に向かって無言でうなずいた。

パパが部屋を出て行くと、あたしはカンガルーの縫いぐるみを抱きよせて、体に残った痛みが治まるまでじっとしていた。


それが悪夢のはじまりだった。


日曜日になってママが陶芸教室に出かけると、パパは必ずあたしの部屋にやってきた。

そして同じことが繰り返される。

日曜日だけは、あたしが遊びに出かけることをパパは決して許さなかった。

一度こっそり家を出ようとしてパパに見つかり、気を失うほどひどい目にあわされた。

パパの言いつけは絶対に破れないのだと、理解しないわけにはいかなかった。


そうしてパパとの秘密をつみ重ねていくうちに、いつしか痛みは感じなくなった。

あたしはただ、ベッドに横たわって目を閉じていればよかった。