ミモザの朽ち木

学校を出たものの、すんなり家に帰る気にはなれなかった。

駅前の商店街をぶらつき、公園のベンチに座って噴水を眺め、気がつくと時間は九時を回ろうとしていた。

携帯電話を見ると、ママからの着信が二回入っている。

あたしは公園を出てしぶしぶ家に向かった。


家について玄関を上がると、バスタオルを腰に巻いただけのパパが洗面所から出てきた。

あたしは悲鳴を上げそうになった。


「おお、ひかる。今日は遅かったな」


パパの体はきれいなものだった。

あたしがめった刺しにした跡もなければ、大火傷の跡もない。

だけどそれは、間違いなくあたしの知っているパパの体だった。


パパはそのまま寝室に入った。

あたしはキッチンに行って、まるっきり手をつけていない弁当箱を流し台のすみに置くと、夕食はいらないとだけママに伝えて、さっさと二階に上がった。