ミモザの朽ち木

窓から差し込む西日に照らされ、教室がオレンジ色に染まっている。

これから家に帰ることを思うと、どっと気分が落ち込んだ。


「乃村、具合でも悪いのか? 顔色がよくないぞ」


はっとして顔を上げると、いつからそこにいたのか、あたしの真正面に担任の乙ヶ部が立っていた。


存在感のまったくない教師。

地味で冴えない、どこにでもいるような男。

たぶん、学校の外で見かけても気がつきもしないだろう。

乙ヶ部が個人的に話しかけてくることなんてほとんどなかったので、あたしは少し戸惑ってしまった。


「大丈夫です、なんでもありません」


話したところでどうにもならないし、あまり乙ヶ部と関わりたくもなかった。

あたしはさっさと帰り支度をして教室を後にした。