ミモザの朽ち木

比佐史は平日に病院の予約を取り、私を連れて行くために仕事を休んだ。


午後の昼下がり、比佐史の運転する車に乗って二人で病院へと向かう。

私は助手席でずっと顔を伏せていた。

ガラス越しに流れる街並みの中に、ひかるの幻影を見つけてしまうことが恐ろしかった。


三十分ほど走ったところで、比佐史は路肩のパーキングスペースに車を止めた。

比佐史に体を支えられながら横断歩道を渡る。

道行く数人のビジネスマンが怪訝な目で私を見ていた。


真新しい雑居ビルに入り、エレベーターに乗った。

私を安心させようとしてか、比佐史がしきりに何かを話しかけていたが、全く耳に入らなかった。

私はただ、ひかるが現れないことを一心に祈っていた。