ミモザの朽ち木

「職場の人間に紹介してもらったんだ。腕利きの医者らしい」


私を精神科医に診せると比佐史が言った。


まるでころ合いを見計らっていたかのように、その日に命を絶つつもりでいた私を引きとめる形になった。

この愚鈍な夫も、廃人さながらの生活を送る自分の妻に、それなりの危機感を募らせていたらしい。

医者に診せたところで気休めにもならないと思いながらも、私は比佐史の言うがままに従った。

もしかすると、この悪夢から抜け出せる道がどこかにあるのかもしれない。

そんなかすかな期待があったことも確かだった。