ミモザの朽ち木

いつからか幻覚を見るようになった。

いや、幻なのかどうか、もはやそれさえわからない。


朝、目が覚めると、股のあたりを中心にシーツが鮮血に染まっている。


ふと気がつくと私はキッチンにいて、まな板の上で赤子を切り刻んでいる。


用を足したあとの便器には、粘膜と血に覆われた小さな胎児がへばりついている。


――おそらく私は、出口のない夢魔の迷宮をさまよっているのだ。



私は日に日に無気力になり、一日の大半をベッドで過ごすようになった。


一体どうすれば、この悪夢を終わらせることができるだろう?


霞がかった意識の中で、私はそのことだけを考えた。

そして、思いのほかたやすく結論に達した。


寝室に飾られた記憶にない写真――ミモザの木の下に並ぶ三人の顔を眺めながら、私は死ぬことを決心した。