HEMLOCK‐ヘムロック‐

 そう。元々透は3年前まで成績優秀な医大生だったが、ある事件がきっかけで退学となり、医局からも追われた。

そして、借金の為にホストをしていた過去がある。


「その時のホストの先輩に騙されて、俺は――」

「……」



 しばらくの沈黙が流れた。が、透は意を決した様に言葉を続けた。




「麻薬を、客に売ってたんだ。……『HEMLOCK』を……」


 今度は泉が固まる番となった。

 透が今どんな気持ちでこの話をしているのかと思うと、申し訳ない気持ちが言葉に換えられず、収まりかけていた涙がまた滲み出てきた。


 透にとって、人に言えない、だから界や盟に庇われてる秘密と知っていたのに。



「遂にそれが事件になって、助けてくれたのが子供の時知り合いだった界と、妹の盟なんだ。
あの2人には本当に感謝してる。
もちろん泉の事だってそうだよ。お金の事だけじゃなくて、ホントに色々助けてもらってる。
泉は俺達にとって大切な一員だよ」



「――ゴメ……っ、ごめんなさい透くんっ。泉超バカだ……」


 泉のその言葉を聞いて、透の表情が柔らかくなる。


「良かった。嫌われなくて」

「そこまでバカじゃないよ゛っ!!」


 しばらく泉は泣きっぱなしだったが、もうその涙の意味は別の物となっていた。

 透も笑っていた。