HEMLOCK‐ヘムロック‐

 その事実――自身のマネージャーの死を知って、鞠 あさみは度重なる精神ダメージで衰弱してしまったのだ。
今はグッタリと界におぶさられている。


「それは大丈夫だから。ちょっと盟呼んで来てくれねぇか? コイツさっき過呼吸になって大変だったんだ」


 グスグスと鼻を鳴らしながら、泉は盟を呼びに行った。
呼ばれた盟は奥の彼女自身の自室のベッドにあさみを寝かせてやった。

 軽くなった腰を抑えながら、界は部屋から出てきた盟に尋ねる。


「どうだ?」

「落ち着いてるから寝かせとけば大丈夫だと思う」


 やっと一息ついた所で興信所のドアを叩く音がした。1日でこんなに来客が多かった日は、黒菱興信所歴初である。
しかし、来客は依頼人ではなかった。


 警視庁の刑事が迎えにやって来たのだ。迎えは森永刑事一課の者ではない。


初めて界を見た刑事は、彼の真っ白な頭髪に驚き、目を見張った。が、すぐに調子を戻した。


「……警視庁の者です。黒菱興信所の黒菱 界さん、盟さん、事の説明はすでに受けてると思いますが。豊島 一哉殺害事件の参考人として署までご同行願えますか?」


 界は一言「わかりました」と答えた。盟も界に続いて黙って立ち上がる。