HEMLOCK‐ヘムロック‐





「透? 鞠 あさみは界が見つけたから、今から興信所に連れて来るって」


 盟は興信所で透に電話していた。
界からの連絡があり、一応あさみは無事保護した形となったからだ。


『あぁ、さっき俺にも界から連絡あった。男の方は鞠 あさみを見捨てて逃げたんだろ?』

「らしいわね。アポロンって男なんだけど、名簿にはそんな名前ないの」

『その「アポロン」てのも偽名かもな。俺今「Raiz」に向かってるから。ダメ元だけど、アポロンについて探ってみる』

「わかった。気を付けてね」




 透との電話が切れた。盟は受話器を一回置いて、もう一度、今度は別の人に電話をかけてみた。

トゥルルルルル……


『お掛けになった電話は、電波が届かない所にあるか……』


「出ないわ」

「誰? 豊島さん??」

 泉が作業の手を休めて尋ねた。


「えぇ。でもおかしい。あんなに鞠 あさみを気にしてたのに連絡がつかないなんて……」

「車の運転中とか、は……?」


 そう言いつつも、泉も違和感は感じていた。豊島のあの態度から、このタイミングで連絡が途絶えるのは不自然だ。


「あの人なら運転中でも出る筈だわ」


 その時興信所の電話が鳴った。


「豊島さんだよ!!」

「はい! 黒菱興信所でございます!!」


 盟も豊島だと思い、いつもの形式ばった電話の応対をかなりシンプルに、しかも早口にまとめた。