HEMLOCK‐ヘムロック‐




 興信所では、盟と泉が例の会員制バーについての捜査をしていた。
 インターネットで検索していた泉が声を上げる。


「盟! 会員制バー『Raiz』(ライズ)なんだけどぉ、会員費年間200万払うのが条件の最低ラインみたい! どうする? 入る?」


 金銭感覚の麻痺したお嬢様からの、突拍子も無い提案だった。


「冗談じゃないわよ! そんな事必要ないわ。『Raiz』の関係者、会員が知りたいわね……」

「え~! それは、ハッキングとかしなきゃ無理くない!? 泉そこまではちょっと」


 泉は依頼人の一哉の前だと言うのに発言に節操がなかった。

 ちなみに黒菱興信所が情報を引き出す為にハッキング行為を日頃行っているかどうかは、……皆様のご想像にお任せする。


「豊島様、鞠様の居場所が解りましたらすぐに連絡致しますから、今日は事務所の方にお戻りになっては如何でしょうか?」


 盟はソファーで憔悴しきっている一哉を気遣って声を掛けた。まぁ、遠まわしに帰ってくれ。と言う意図も含まれているのだが。
豊島もそれが分からない程愚かではなかった。


「解りました。ここに居ても僕はお邪魔でしょうし。何か解ったら必ず、連絡下さいね!」


 盟に見送られ、豊島は興信所を後にした。
しかしこの判断を下した事に、盟は後に激しく後悔する事になる。