HEMLOCK‐ヘムロック‐


「あー、あの豊島ってお兄さん? やっぱ俺の事で、……だよね?」


 アポロンがはにかんで見せたが、あさみの焦燥は収まらない。


「ここ、もう危ないよ! アポロン、あたしンちに来なよ!」

「フフ、大丈夫。寝るトコまで困ってないよ。アサミが沢山協力してくれたから」

「じゃあ、これからどうする気?」



「しばらくは会うのよそう。何よりアサミ、芸能人でしょ? 俺なんか部屋に入れたらフライデーされちゃうよ」


 あさみの問い掛けに、しばし間を置いてアポロンは答えた。しかしそれは、どこか用意されていた様な答えであった。

 「会うのをよそう」と言われ、あさみはますます彼に身を寄せた。


「そんなの全然いいよ!! ここでの事がバレるよりっ
……アポロンと会えなくなるなんて、考えられないっ」


 アポロンは困った様な、でもけして残念がってる訳ではない様な顔をしている。


「アサミ、言ったでしょ? 俺にはたった1人の、心に決めてる女性がいるって。
アサミをそういう風には見れないんだよ」


 男の言葉はまるで少女マンガの台詞の様だが、顔は至って真剣だ。
 あさみはそれでも彼を、潤んだ熱い眼差しで見つめていた。


「アポロンの一番になれなくてもいい。だから、あたしから離れていかないで……」