HEMLOCK‐ヘムロック‐





(礼二さん遅いな~。社長だから暇人だと思ってたけど。なんかもう帰りたいなぁ……)


 泉は未だに会議室で礼二を待っていた。

 勇以外の秘書がお茶を煎れてくれたが、それももう冷めてしまった。
暇を持て余して、泉はだらしなく椅子から足をプラプラとさせていた。
会議室の椅子さえも興信所のパイプ椅子とは違って高級そうである。



コンコン、ガチャ


「大変お待たせ致しました。社長の黒菱 礼二です」

「あ! はじめまして、黒菱興信所の銅 泉です」


 突然礼二が現れて、泉はビックリしながら姿勢を正した。
界の兄との初のご対面に改めて緊張が走る。


「界についての話しと聞きましたが、……珍しいですね。ウチに用がある時は必ず盟が来ることになってるのですが」


 それは泉にとっては意外な事実だった。てっきり界や透もよく出入りしていると思っていたからだ。


「それとも盟も知らない事なんでしょうか?」


(い、いきなりスルドいなぁ。なんかヤなカンジ……)


 礼二は勇の様に端正な顔立ちだったが色素の薄い髪と目だけは違った。


何より目が氷の様に冷たい。