HEMLOCK‐ヘムロック‐


「なんなんだ! あの女!!」


 透が珍しく憤慨している。


「とりあえず豊島さんに確認してみる」


 盟が豊島 一哉の名刺と、受話器を取った。


「いくら依頼人だからって、あの態度はないだろ。色々幻滅したよ」


 透はまだ納得行かない様で、イライラしながら席に着いた。


「まぁ、そんな怒んなって~。芸能人だけあって、怒ってても可愛いかったじゃねーか」


 界のこの発言に、盟はダイアルを押す手を止めて彼を睨んだ。
透も信じられないと言った目で界を見ている。


(あれ? 逆効果だったか?)


 界としては、このトゲトゲした空気をどうにかしたかったらしいが、更に重い沈黙に展開してしまった。


 ヘラヘラしてる界から目を背け、盟は無言で再びダイアルを始める。

 「やっちった」と界が目配せしても、透は呆れ返るばかりであった。