HEMLOCK‐ヘムロック‐


「私は社長秘書の城戸 勇(いさむ)と申します。よろしければ、私がお話しを伺ってから社長にお通ししましょうか?」

「ほ、ホントですか?」

(でも、ぶっちゃけ礼二さん以外に『HEMLOCK』の事なんて話せないよ~)


 それでも礼二に会える可能性を取って、泉は勇に付いていく事にした。

 エントランスを横切り、エレベーターに乗りこむ。エレベーターのボタンはガラス加工が高級デパートの様で綺麗である。


「もしかしてあなたが、社長の妹さんですか?」

「え、いや、私は違いますっ!銅 泉と言います。ただの社員ですっ」


 突然の勇からの質問に泉は何故か全力で否定した。
社員でもないのだが……。

 彼は先程のやり取りの前半を聞いていなかったらしい。


「そうですか。スミマセン。2ヶ月程前にここに来たばかりでして。
社長の弟さんと妹さんが興信所をやっていると触りだけは聞いてまして」

「あ、そうなんですか」

「なぜ弟さん達は同業なのに独立なされたんですかね?我が社にも子会社や事務所は沢山ありますが」

「え……。私もよくわからないです」


 気付くと何故か泉が勇の話を聞いている。
この男、見た目の割りに話し好きのようだ。