HEMLOCK‐ヘムロック‐




 事務所の3人は依頼人用のソファーに座り、資料を広げたテーブルを挟んで会議していた。


「鞠 あさみのストーカーについての依頼か。でもさ、芸能人相手なら、こういうのって警察が動いてくれるんじゃないのか?」


 透が資料に目を通しながら呟いた。


「しかも気になるのが、依頼してきたのはアサミン本人でも、所属事務所でもないって所なんだよな」


 界も片手でネクタイをほどきながら依頼項目の詳細欄を確認する。


「何故、鞠 あさみの“マネージャー”が個人的に依頼に来たのかしら」


 盟が言った鞠 あさみのマネージャー、豊島 一哉。彼が今回の依頼人である。

 彼は鞠 あさみに付きまとうストーカーを処理して欲しいと“黒菱探偵社”に依頼した――その依頼が兄から弟の界へ。
つまり黒菱興信所に回って来たわけである。

 透は豊島の名刺を手に取った。


「なんかワケ有りみたいだな。通りで探偵なんかに依頼する訳だ。肩書きは本物なのか?」


 名刺の会社名やロゴ、印刷形式などを見ながら透が聞いた。「ロゴは多分本物よ」と盟が返す。


「しかも相手は芸能人だ。骨が折れるぞ。アサミンを張るのは」

「……界、いい加減アサミンって呼ぶの止めてくれない?」