HEMLOCK‐ヘムロック‐


「ではよろしくお願いします」

「ありがとうございました」


 泉が調べものに夢中になってる間に界の依頼相談も終わったようだった。


「アサミン帰っちゃった?」


 サインの事を思い出し、少しバツが悪そうに泉は尋ねた。が……


「……あぁ」

「ていうか……」

「来なかったのよ。来たのはマネージャー。あと兄さんの所の社員ね」


 あれだけアサミンを楽しみにしていたのに、2人、特に界のガッカリ具合は滑稽だった。
彼の周りだけ重力の掛かり方が違う気がする。
盟は何だか笑顔であった。


「アハッ 界くんガッカリしすぎ~」

「……お前、いつもの調子に戻ったな」

「え?」

「泉はやっぱ元気な方がいいよな」


 界や透にそう言われて、泉は『HEMLOCK』の事を思い出してしまった。
自分はその事で落ち込んでいた事、そして調べてみたが特に手柄も無かった事。


「あ。兄さんの会社の人、携帯忘れてってる」


 依頼相談の資料を片づけていた盟が発見した。
 俄かに泉の目の色が変わる。


「……あ! じゃあソレ! 泉が届けようか!? 今なら追いかければ間に合うよ!!」

「お前、社員と依頼人の顔わかんねーだろ?」