そこには異様な光景があった。
看護師が映に驚き、振り返る。その右手には点滴の針ではなく、何故か注射器が携えられている。
左手でまりの細い身体をベットに押さえつけ、まりは弱々しくも手足をバタつかせ、必死に抵抗している。
――女と思い、完全に油断していた。
「お、お前!」
映は瞬時に偽物の看護師の襟首を掴み、注射器を持つ手を後ろ手に捩ろうと構えた。
しかし、
ブス!
映が伸ばした右腕に注射器を刺し、中の薬物を注入してきたのだ。
一瞬の出来事であった。
「っく! 」
映は急速に液体を注入される痛みを感じながら、左手で掴んでいた襟首を力一杯引いた。
偽物の看護師は後頭部から強かに床に叩き付けられ、気を失ってしまった。
「ううっ、痛っ」
注射器の液体は半分程映に流し込まれていた。無理矢理刺されたので、針を抜くと意外な量の血が滲む。
「伯方さん! 無事ですか!?」
まりは放心状態で、酷く脅えている様だった。
しばらくして映を見て頷く。
奇妙な事に、これが2人の初めてのやりとりだった。

