HEMLOCK‐ヘムロック‐

 映が戻って来ても、まりは窓の外を見ているままで振り返えらない。
一応、小さく部屋が仕切られている事だけが唯一の救い。
彼女のプライバシーを気遣う名目で、映は仕切られた隣の間にいる事が多かった。


コンコン


「伯方さん、点滴替えに来ました」

「あぁ、どうも」


 突然の看護師の来訪に、映は少し慌てて挨拶を交わした。
梃でも動かなそうだったまりも、こちらを向いた。


 病院側も、まりに警察が付いている事は知っているが、家族でも無い映にとってこの瞬間は結構やりにくかった。
例えば着替え等もある為、看護師に治療されているまりを見るのも色々と気まずく、やはり隣の間で待つ。


 しかし、その日映はふと異変に気付いた。


(あれ? 点滴、まだ終わってない……?)


 部屋を割る仕切りは、天井まで仕切っていない。高く吊された点滴の入った袋は、仕切り越しの映からも確認できた。
点滴はまだ袋の目盛りの半分弱程残っている。


「看護師さん、まだ点滴残って――」


 映は隣に控え目に顔を出した。