HEMLOCK‐ヘムロック‐

しかしポーンを止めなければ、それはそれで界は確実に負けていただろう。


 完璧なアイリーンの勝利で勝負の幕は閉じた。


『最後の最後でつまんないミスね』


 アイリーンは立ち上がると、まるで可哀相なモノでも見るかの様な眼差しで界を見下した。
しかし口元は嘲笑の形に歪んでいる。

 細長い人差し指で界の黒いキングの駒を倒す。
コン! と木製の明るい音が部屋に響いた。

 倒されたキングは、盤上を転がり、やけに軽い音と共に床へ落下した。界はただ黙ってキングの末路を見届けている。




『お前はこのキングみたいだな』


 瞬間、アイリーンは耳を疑うと言った表情で固まった。


『イオが、お前を助けてやって欲しい。って俺に言ったんだ。正直俺は納得いかなかった。お前は自分で望んでここにいる』

『イオがそんな事を?』

『だけど、今ならイオやランディの気持ちも分かる気がする。
お前は悲し過ぎる』


 再び部屋は無音になった。
立ったまま、界を見下ろすアイリーン。そんなアイリーンを仰ぐ界。


『私の過去に同情でもしてるわけ?』