HEMLOCK‐ヘムロック‐


「部屋は暗かったけど、なんとなく気になって覗いて見たら……、
誰かがパパとママを刺してたの! こんな風に!」

「やめなさい!!」


 ガンガンと皿が鳴り、肉汁が飛び散る。

アイリーンがフォークでマッシュポテトやステーキを、めった刺しにするのを、男は後ろから抱きかかえる様にして必死に止めた。


「次に気付いたら、あの日の病院のベッドだった。おじさんは誰かと喋ってて、私のカーテンを開けたわ」


 もはやアイリーンは微動だにしなかったが、後ろから彼女を抱く男は震えながら泣いていた。


「それは全部こないだ夢で見た事だけど、ただの夢じゃないって気付いたの。
あの日確かにパパとママは殺された。だから……、だから私はおじさんの家に居るのよね?」

 次の瞬間、男は声をあげて泣いた。
大の大人がわぁわぁと泣く不様に、逆にアイリーンは泣く事が出来なかった。

 涙なら、もう死ぬ程流して枯れ果てたのだ。


「おじさん、パパとママはどうしてオルフェウスやエウリュリケと呼ばれていたの? アフロディーテが駄目なら、私、何なら成れるかな?」