界はアイリーンの呪いの様な言葉を、じっと受け取っていた。


『アレスはHEMLOCKの完成を防ぐ為に、逃げる前にHEMLOCK製造に関わる研究データを全て消去していった。
真っ白になったプロジェクトは、元製作メンバーに託されたけど誰1人、アレスという天才の高みには追いつけなかった。

プロジェクト自体が白紙になりかけたのを、“私が”、“私が”1から全て立ち上げたの!! アレスが消し去ったHEMLOCKの理論を、少ない手掛かりで研究して10年もかけて!!!』


 ハァハァと肩で息をしながら、アイリーンはいつの間にか立ち上がって力説していた。が、動じない界の態度に余計腹が立った。


『あんたの妹も、その為に被験者としてズタボロに使ってやったわ……!』


 その言葉でにわかに界の顔色が変わる。アイリーンは勝ち誇った笑みを浮かべ、満足げに席についた。




『そしてHEMLOCKは、完成した』



 思わず界は顔を上げた。目は驚きに剥かれている。


『被験者が3人死んだ。HEMLOCKは遂にX-イジョウム抗体すら蝕む本物の毒薬になったの……!!』

「まさか……」


 思わず界は日本語で驚愕の言葉を漏らした。

 しかし続くアイリーンの言葉に更に衝撃を受ける。