HEMLOCK‐ヘムロック‐

 しかし、次にイオが放った言葉は、界の理解を超えたものであった。


「全ての真相を知った彼女は、組織の研究員として、『HEMLOCK』を完成させる為にそのチームに加わったんだ。そしてたった1年でHEMLOCK開発チームの頂点に立った」




「え……!?」


 それが何の為なのか、界には理解不能だった。

 HEMLOCKは、アイリーンの人生を狂わせた元凶そのものだ。


「だってソイツは、アイリーンは……、HEMLOCKの実験、いや、存在そのものの被害者だろ!?」

「違うよカイくん。彼女にとっての元凶は、あくまで君の両親だ。
そして研究を始めた君のお父さんは、自らその研究を打ち切り、逃げ出し、結果彼女の両親をも殺した……。
アレスが投げ出したHEMLOCKを彼女が完成させる事がアイリーンの“復讐”なんだよ!」


 筋の通っている様な、筋違いの話。

 アイリーンの復讐は暗く、酷く歪んでいる。


「じゃあ、まりを被験させてたのは、まさか……!?」


 イオは黙って肯定の意味で頷いた。