HEMLOCK‐ヘムロック‐

 もしあの2人に幼い娘がいたならば?



 逃げた果てに追われ、殺された界の両親の事を考えれば、ケネス・イーグルトンとオードリー・イーグルトンの末路など、火を見るより明らかだった。

 11歳の少女は、界と同じ様に両親の死に直面し、妹、まりと同じ様に紅龍會に連れて行かれたのだ。



 界に未曾有の絶望感がのしかかる。






「……アイリーンは被験者に該当しなかったから解放された。両親が紅龍會と言う組織の人間だった事すら彼女にはショックだったと思う。
でもそれ以上に両親が何故殺されたのかを彼女は知りたかったんだ」

「……」

「だからその真相を見つける為、紅龍會に入る道を選んだ。
そして知ってしまった。アイリーンの両親はね……、カイくんの両親を庇った罪で組織に殺されたんだ」

「……」

「だから……カイくんの両親、――アレス、アテナの事をこの上なく憎んでる」



 当然だろう。
 もし界が、探偵の道をくれた灰仁と出会う事無く、紅龍會と言う手掛かりを知っていたならば、彼もアイリーンと同じ手段を取っていただろう。


 彼女にはそれだけが生きる目標だった。


 界もそうだった様に。