HEMLOCK‐ヘムロック‐


「25歳。そう。“14年前”だよ。カイくん……」


 界は鳩尾に重い衝撃を受けた感覚になった。自分の頭の回転が早すぎる事を初めて呪った。
 嫌な予感程合致は早く、恐怖が加速する。


「ソイツの両親は研究員……、幹部……」

「……」


 もはや界の独り言だったが、一歩一歩、確かめるかの様に……。


「アイリーンの両親は14年前組織に殺された。その時彼女は、X-イジョウムの保持者かどうか、被験者に成りうるかを確認される為に組織の研究所に連れて行かれた。
……それが、彼女が紅龍會の存在を知る切っ掛けになったんだ」










『急がないと。もう準備は出来ているわ』

『エイタ。いや、チーフ。あなたの元で働けた事、忘れはしない』

『ケネス、オードリー。すまない。本当に』

『どうか無事でいてね……』






ケネス、オードリー。










 自分の記憶力も呪った。

 当時は解らなかった英語の会話も、記憶の海から鮮明に蘇り、しかも現在ならその英語も理解出来た。


 もしあの時の白人の男女が父、栄太の部下だったなら?

 もしあの時の2人は、伯方家の夜逃げを手助けしていたのなら?