HEMLOCK‐ヘムロック‐

しかし隣の壁と大きなガラス窓で仕切られた部屋の向こうには、何やら装置が設置されており、まるでレントゲン撮影をする部屋の構造である。


『この部屋は精密機器の関係でカメラが無いの。もう楽にしてどうぞ』


 アイリーンはロッカーに、着ていたチャコールのスーツを掛け、代わりに白衣を取り出して羽織った。界にも男性用のそれを渡す。


『一応着ておいて。もう分かってると思うけど、あなたは私の授業を取ってる理系大の生徒で、卒論の為に私の研究見学に来た設定だから』


 ランディのアシスタント設定よりずっと現実的であった。

 界は黒いワイシャツの上にそのまま白衣を羽織り、カメラも本当に無さそうなのでついでにカツラを取った。眼鏡はそのままにしておいたが。


『……大学で講師してんのか?』

『ええ。非常勤で』

『副業が講師とはな。紅龍會幹部の割に堂々としてんのな』

『まぁ、表向きは製薬会社の研究員だから』


 アイリーンはコーヒーメーカーをセットすると、席に着いた。界にも席を勧める。


『あなたが聞きたいのはそんな事じゃないでしょ? 伯方 界』

 アイリーンは探るのを楽しむ様に界を見つめた。