HEMLOCK‐ヘムロック‐


「入院されたのはつい最近です。詳しくは、担当なら……」

「あの、お兄さんや妹さんはよくお見舞いに来られているんでしょうか?」

「お兄さん……? は、ちょっと知りませんけど、息子さんや娘さんは毎日いらっしゃってます」

「息子!? お子さんがいるんですか?」


 映の食いつき振りと発言に、看護師は不審な表情を浮かべた。


「お子さんと言っても、もう社会人の方の様ですけど。あのおばあちゃん、何かあったんですか?」


「おばあちゃん?」

「だって、伯方 まりさん、ですよね?」

「その方、僕くらいの年齢じゃないんですか!?」

「いいえ。むしろ息子さんの方が刑事さんくらいですよ?」



 映はクラクラしながらも、ありがとうございました。と看護師に呆然と言い残し、その場を去った。

徐々に駆け足になり、1階のエントランスを抜け、出口を抜け、車で来たにも関わらず、駐車場とは逆の広場の方に来てしまった。

一呼吸置いて映は携帯電話を取り出し、電話した。


「森永先輩。大変です」



 それは界が紅龍會に向かう前日の、最後の見舞いの日の出来事であった。