HEMLOCK‐ヘムロック‐




 『祥福』という飲み屋は、まるで日本のコンビニエンスストア並みに点在している。
酷い時は、直ぐ斜向かいが同じ店になっていた。同じ名の店だが、どの店も雰囲気が違うし、飲み屋ではない店もあるのでチェーン展開している訳ではないらしい。全く別モノの店のようだ。

 しかし19件目の『祥福』で、ようやく界は希望を取り戻した。

 その店の前に人集りが出来ており、誰かがケンカをしている様だった。
界の位置からは様子が窺えないが、喧騒の中に一瞬、酷く訛った中国語が聞こえた。
それは地方の訛りではなく、明らかに外国人の訛りであった。


『ちょっと、スミマセン!』


 界は中国語で人集りを掻き分けて進んだ。

前に進むにつれ、ケンカ見物で興奮した野次馬が増え、界は茶髪のカツラがずれないよう、必死だった。


『ここはなぁ~、テメェみてぇな輩が来るトコじゃねぇんだよぉ!』

『いいぞー! オヤジぃ! やっちまえ!』


 界が人集りの先頭に出ると酔っ払った中年男性が、時期的にはまだ早い黒いコートを着たフランス人に怒鳴りつけていた。周りの野次も、オヤジに味方している。

 フランス人の男はすごく汚い物を見る様な目でオヤジを見ていた。かなりの長身で見下ろす形になっている。