HEMLOCK‐ヘムロック‐




『現実的に言うとカイくんが場所を知った所で、紅龍會に1人で潜り込むのは到底無理なんだよ』

『ああ、そこは俺も悩んでる所だ』

『だから俺が、信用の置ける人物を紹介してあげるよ。こないだの最高幹部のコードを書いた紙ある? オリンポス12神の』

『おお、コレか? てか最高幹部に俺が紅龍會を潰すのをわざわざ手伝ってくれるヤツがいんのか!?』

『いるよ。俺の悪友で兄貴分♪ 彼なら紅龍會が無くなろうが問題無いからね~』


 そう言ってイオが指差した幹部コードは――。



(ヘルメス……。コイツとこの街の飲み屋で落ち合わせるハズなのに、ここはどこも飲み屋ばっかじゃねーか!!)


 約束の時間よりかなり早く到着した界だったが、既にその時間を20分は超えてしまった。
『祥福』と言う店なのだが、ここに来てその名の店に15件は出会っている。


(なんで同じ名前ばっかなんだよ! ヘルメスの特徴も大柄なフランス人としか聞いてねーし……)


 そんな人物がこの場に居れば一発で解りそうだとタカを括っていた界だったが、自信は一歩歩むごとに擦り減っていった。

 変装用のカツラの中が蒸れて来て、益々イライラしてきた。