HEMLOCK‐ヘムロック‐

 そして黒菱 界。この男が皮肉にも自分にとっても侮れず、しかも信用の置ける人材だと言う事も。


(カイくんになら託せるかもしれない――彼女の事を)


「カイくんに、助けて欲しい人がいるんだ。紅龍會に」

「盟の母親か?」

「いや。……メイの事を想えばそうかも知れないけど、あの人は“ああなる前”から自分の意志で幹部にいたから」


 現在『HEMLOCK』の被験者にされていると言う盟の母親。
界は敢えて、“ああなる前”の“ああ”の部分は具体的に追及しなかった。


 まりの様子を見れば聞きたくもなかった。


「俺の……、親友なんだ」

「親友……?」



 イオが紅龍會の現状と、その親友の事を語るのに、その日の半日を費やした。

 2人はお互いの事情の上で、界が紅龍會に乗り込む事をイオが手助けをする“契約”をしたのである。









 界は未だ目当ての人物が見つからず、市場のようなその街をさ迷っていた。
道路が整備されていないので、引きずるキャリーバックはだいぶ土汚れで白くなってしまった。

 界はイオとの会話を思い起こした。