HEMLOCK‐ヘムロック‐

 イオはその部分は即答した。

「早く日本に行きたかったけど、それを思い止まらせる人物がいたから」


 俯いたまま、真剣な声色で呟く。今までより声のトーンが沈んでいるのは明らかだった。


「今日カイ君が俺を呼び出した理由って……、俺から紅龍會の事を聞き出す為でしょ? 場所とか現在の内情を。メイと紅龍會に乗り込むつもりなの?」

「いや。1人でだ」


 この時点で界はイオには自分の企みを教えていた。
紅龍會に1人で行き、HEMLOCKと紅龍會そのものを潰しに行く事を。



 イオは意を決した様に顔を上げ、界を見つめた。


「ならもし、俺を信じてくれるなら……、頼みたい事があるんだ! なんなら俺も紅龍會に行って潰すの協力したっていい!!」


 イオが初めて自分の信用を請った瞬間だった。界はこの時にイオを完全に信用する事にしたのだ。


 “イオには盟以外の個人的な事情がある。”と。


「お前は興信所に残ってて欲しい。もし紅龍會から追っ手が来た時、直ぐに判るのはお前だけだ。あいつらを守って欲しい」


 「そうだよね」とイオは真剣に頷いた。




 本来なら盟を攫って2人でとんずら……、と考えていたイオだったが、思いの他、彼はまりや興信所メンバーにも愛着が生まれていた。