HEMLOCK‐ヘムロック‐




 界が興信所に戻ると事務所には誰も居なかった。もちろん、盟が界より先に着く由もない。

しかし界がそのまま自室に向かう時、資料室のドアから出て来た泉と鉢合わせになった。


「わ! 界くん、お帰り」

「ただいま」


 どうやら資料室でイオと作業していたらしい。
本当にいきなり鉢合わせたので、界は地味に驚いた。

 不意に泉の身長もかなり伸びたなと感じた。何と言っても彼女もまだ15歳の少女だ。


「盟はー?」

「んー、ちょっとケンカした」

「はぁー。いい歳してぇー」


 自室に入っていく界の背中に泉は溜め息混じりに放つ。今朝の透との喧嘩の事もあり、実はいつも以上に心配していたのだが……。
そうとは界は露程にも思わずにいた。



 界は自室に入ると、部屋を見渡し、溜め息をついた。

 小さなクローゼット、棚、ベッド。質素なこの部屋は、主に興信所で寝泊まりする為だけの目的で存在する界の部屋。
この部屋だけは、界以外、盟すら入る事は許されない。

 部屋の隅には小さなキャリーバックが置いてある。
棚から2つの白い封筒を取り出し、キャリーバックの外ポケットにそれを押し込んだ。

 それを持つと、界は質素な部屋を抜け、短い廊下を渡った。