「あの日お前に、『俺に協力して欲しい』って言った事。言う前も悩んだけど、言ってからもずっと悩んでた」
盟はショックを受けた様な表情で一瞬言葉を失ってしまった。
一呼吸置いて自分の意志を言葉にするのに、数秒かかった。
「私は、言われなくてもそうするつもりだった。嬉しかったし、それは今も変わらない!」
「俺は最初から後悔してた」
「やめてよ!! 今になってそんな風に言わないで」
「俺は……、お前にもっと普通に幸せになって欲しいんだ」
信号が青になったというのに、界はアクセルを踏む事も忘れている。
盟は涙で瞳を歪ませながら、界の言葉を受け続けた。
「大学に行ったり、もっと自由に買い物したり、友達と遊んだり……。
もっと、普通の兄妹みたいにお前と……」
界の言葉が途切れる。
盟は意図して続きを待ったが、界が口を開く事は無かった。
何より、盟が欲しい言葉は“そうじゃない”のだ。
「私、界を兄だなんて思って無い」
盟はそう言い残し、そのまま助手席を降りて駆け去ってしまった。
界は焦って名前を呼んだが、盟が振り返る事は無かった。
後ろで溜まっている車がクラクションを鳴らしたので、仕方無しにアクセルを踏むしかなかった。

