HEMLOCK‐ヘムロック‐


「安全だったのは今日までの話だ」


 本当にその通りである。
 イオを迎え、まりが戻って来た今、こちらから仕掛けずとも紅龍會が手を伸ばしてくる事は最早いつ起こってもおかしくない。

 今まで界も盟も“黒菱”の名にその正体は守られて来た。しかしこれからは逃げる事も隠れる事も難しい状況になっていく。


「もう俺達はただ平和に暮らすなんて事は出来ない。なのに透も泉も、兄貴や詠乃さんまで巻き込んじまった。
あいつらだけは守ってやんねーと……」

「だったら私を“そっち側”に縛る様なマネはやめて!!」


 ものすごい剣幕で盟が怒鳴った。


「私は守られる存在なんかになりたい訳じゃない! そんな資格もない。まりさんを連れ戻せても、まだ界が紅龍會に対抗するなら、私も行くわ!」


 「私も“行く”」と言う表現。

 盟には界がこの先どういう行動を取ろうとしているのか、もう解っている。


 車が赤信号で停止する。


「今でもあの時、お前にああ言った事を後悔してる」


 界の言う“あの時”が盟には分からなかった。