HEMLOCK‐ヘムロック‐





「本当にどういうつもりなの?」

「何だ?」


 まりの病院を後にした車の中。
突然の盟の問いに、界は運転しながらそう聞き返したが、意味はちゃんとわかっていた。


「2件も依頼なんかとって、興信所を忙しくさせて、わざと私を紅龍會の件に関わらせない様にしてる! 透達を巻き込みたく無いのは解るけど、私までどういう事?」


 さすがに盟は界をよく解っていた。界は否定も肯定もしないまま、黙って運転した。
スピードが若干上がり、道路に引かれる白線の感覚が短くなった様に感じられる。


「約束したじゃない。紅龍會の事は2人で調べようって。突き止めようって!! 界の両親が『HEMLOCK』の製造者だったから? 今更自分だけ負い目に感じているの?」

「……」


 界は盟の方を見なかった。
運転しているから当たり前だが、ちらとも反応しない。それが余計に盟には腹立たしい。


「今更私を巻き込みたくないなんて言うの? 紅龍會が、まだ私を狙っているかもしれないから?」


 やはり界は黙っていたが、盟はそれが答えと受け取った。


「界が1人で紅龍會に立ち向かうくらいなら、……私、これまで通り普通に過ごしたい。まりさんは帰って来たし、私だって今日まで安全に暮らしてこれた。もう、紅龍會なんて忘れて生きていきたい」