HEMLOCK‐ヘムロック‐

 病室に入ると、一番手前のベッドにまりは横たわっていた。
界と盟に気付き、上体を起こして嬉しそうに笑った。一週間前より顔色もずっと良い。


「まり! 調子どうだ?」


 まりは見た目こそ老婆の様だが、細く、儚いくらい小さく、腕など今にも折れそうだ。
きっと薬の影響で少女時代からあまり成長していないのだろう。とても界の1つ下の25歳には見えない。

 まりは界の事も、14年前に会ったきりの盟の事もちゃんと覚えており、2人が見舞いに来ると本当に嬉しそうに迎えてくれる。
 盟にはそれが少し心苦しい。まりは盟が紅龍會総帥の娘という事を知らないのだ。


 まりは相変わらず声が上手く出せない。界の呼びかけにはホワイトボードに文字を書いて答える。
 『今日は調子いい』と少したどたどしい字で書かれていた。

 まりの声が出ない理由は、HEMの副作用もあるのだろうが、医師が言うにはストレスによって声帯が腫れ、しかも麻痺していると言う。
腫れが落ち着けばリハビリで再び声が出るようになる望みはあるらしい。

彼女のストレスとは薬による苦痛なのか、心因的な物なのか。