HEMLOCK‐ヘムロック‐


「はァ……!」


 盟は両手で顔を覆って下を向き、ため息を吐いた。それは安堵からくるものであり、少し震えていた。


 しばらくその場の者達は無言だったが、やがて盟がためらいがちに発言した。


「あの、イオ……は?」


 彼女が予想外に14年前のままに自分の名を呼んだので、イオは驚きに目を見開いた。ついでに耳まで真っ赤になって。
 彼にとっては究極の喜びである。


「俺?」


 あまりにも嬉しそうな様子が弾むような声色に表れていて、界はなんとなく気に入らなかったが、黙っていた。


「ええ。その……、組織ではどの様に、過ごしてたの?」


 その質問で至福の気分は、空中で射られた鳥の様に落ちていき、イオの顔からは表情が消えた。


「どの様に、か……。まぁ色々な教育を受けてきたよ。組織の人間になる為に」

「人は殺したのか?」


 遠慮無しに透が聞いた。
彼がイオを仲間にすると言う点で一番ネックにしている部分だ。

 いくらイオは盟を好き過ぎて辞めて来たとは言え、紅龍會がどこまで“やる”組織なのか。
知っておかないと、彼を仲間とする自分達がこの先危険になる事は目に見えているのだから。


「紅龍會と言うと、やっぱりそう言う血なまぐさいイメージかな?」


 イオは組んだ脚の上に更に組んだ自分の手を見ている様だ。


「紅龍會は中国マフィアだからね。もちろん日頃血なまぐさいけど。表向きは中小規模の製薬会社なんだ。『ユノー製薬株式会社』って会社」