「だが今日お前には父さんが紅龍會の事をどこまで掴んでいたのか、その辺の事も話してもらうぞ。そしてこれからの事もな」


 界も紅茶を一口啜ると一旦カップを置き、ミルクを1つと角砂糖を4つ放った。


「相変わらず、甘いのしか飲めないのか」

「分かってんなら入れといてくれよ」

「ミルクは入れない主義じゃなかったか?」


 紅茶をかき混ぜるティースプーンがカップにカチャカチャと当たる音が可愛く反響した。


「それはコーヒーだけだ。コーヒーに入れるとコーヒー牛乳みたいだろ?」

「お前、せめてカフェラテと言ってくれないか? もう26だろう?」


 2人の会話の合間に社長室の扉がノックされた。
礼二が「どうぞ」と声をかけると、予想通り詠乃が中に入って来た。


「久しぶり~! んー! 懐かしいわぁ~ここで秘書やってたのが昨日の事みたい♪」


 詠乃の黒い7センチのピンヒールの踵の響きは、社長室のグレーの絨毯に吸い込まれ、ズボッズボッっという音になった。

 礼二がその跡を怪訝そうに睨んで言う。


「絨毯が傷むからあまりそういう靴で来ないでほしいな」

「ごめ~ん! 礼二くん♪ 界くんもこないだぶりね」