「俺から言ってねーし……。歳なんか、1個違いじゃん」
界がブツブツ文句を垂れていると、3人は港に着いた。漁船が何台も列を連ねている。
その中に、明らかに漁船とは違う異質な船があった。
小型の貨物船の様な船だ。
サビ止めか、鉄板の船体は赤茶の塗料で塗られている。
先程から感じていた違和感を兄妹はとうとう抑えきれなくなった。
「お母さん? 私達、船に乗るの?」
「こんな時間に?」
真夜中にこんな荷物でやって来て、自分達のこれからに不安を抱けない程、兄妹は幼くはなかった。
「界も、まりも、静かにしてなさい」
夜の冷気は海風がかき乱し、真っ暗な海は恐怖そのものであった。
ふと、暗闇から足音が聞こえた。
「加澄」
眼鏡を掛けた男が界達の方に近づいてきた。
顔は髪型とその色を除けば、眼鏡をかけた現在の界そのものだ。特に目が似ている。
「あなた。遅かったわね」
「お父さん! 久しぶ……」
いつも仕事で家に居ない父親との久々の再開に妹、まりは歓喜の声で父を呼んだが、すぐさま固まった。
「……誰? その子」
まりが指差す先には自分の父親に手を引かれた知らない少女がいた。