HEMLOCK‐ヘムロック‐

 界にはそれがどのくらい高価なのかはよくわからなかったし、実物を見るのも初めてであった。

 入ってみると兄の部屋は宇宙や惑星のポスターや写真、雑誌が沢山あった。


「好きなんだ。宇宙とか、天体観測。界くん、興味あるかな?」


 界は素直に首を横に振り、その様子に兄は苦笑いした。


「でも、見てみたい、です」


 みるみると兄の顔はパッと明るくなる。


「ソレ、興味あるって言わないか!? 今日にでも見せてあげるよ! ……あ、ごめん。ついはしゃいでしまった」


 いきなり饒舌になった兄に界は少し戸惑ったが、照れ笑いの兄に、向こうも緊張しているんだ。と少し安心した。


「それと、敬語は止めよう。今日から兄弟なんだ」

「だったら、礼二さんも“界くん”は止めて下さ、……止めて欲しい」

「そうだな。弟だしな! 界も“礼二さん”は止めて……兄貴、とか呼びなよ」


 礼二の後半の言葉は恥ずかしさからか、なんだかごにょごにょと口ごもっていたが、界には聞き取れた。


「……よろしくお願いします。兄貴」


 この6歳上の兄のおかげで、界は心に光を取り戻し始めたのだ。と言っても彼が笑える様になるのはまだまだ先の話。







「今日からお前には家庭教師を3人つける。文系、理系、武道。学校から帰って来たら1日1人づつ来るからな」