「界。私の養子になる気はないかね?」
もう何度目かは分からないが、今回も界が勝った。
しかし、王手を気持ち良くかけた瞬間、目の前の将棋の相手にいきなりそんな提案をされるのは、どんな駒でどんな形で攻められるよりも界を困惑させた。
界が孤児院に来て2年目の13歳の春だった。
「なんで俺?」
少年・界は形として尋ねたが、理由は見当ついていた。
12の誕生日を迎えたばかりの2学期。界は突如、家族を奪われた悲劇の子になった。
マスコミは謎めいた悲劇の事件を連日報道し、偉い人はテレビで勝手な考察をする。
なぜなら事件は普通の殺人事件ではなかったから。
まず荒らされた現場から、界の両親の系譜や素性のわかる物が一切発見されなかった事。両親の遺体があって、妹の遺体が無かった事。
その為、妹は捜索願が出されたが、現場の凶器から妹の指紋が発見された事。
単なる強盗殺人ではないと、怨恨や一家心中説、果てには妹の乱心か?と様々に勝手な憶測が飛び交った。
情報が飛び交う程に世間の目は、伯方家唯一の生き残りの界に向けられた。

