HEMLOCK‐ヘムロック‐




 アポロン、いや、イオは盟に何かを訴えかけるように見つめている。盟は界の後ろから一歩踏み出た。


「あなたの……、その目を見て、段々思い出したわ」


 盟の声はまだ微かに震えている。

 静まり返る事務所内。

 界は盟がもう一歩踏み出す様子を黙って見ているしかなかった。


「あなたが初めての、友達だった……」

「白雪姫のお話、一緒に読んだよね」


 イオが囁く。盟はもう一歩踏み出した所で右目から涙が零れた。


「あれから、……君が居なくなった日から、俺は一生懸命君を捜したんだよ」

「私、は……」

「大丈夫、君のせいじゃないって解ってるよ」

「ワタ、シ、」

「メイもあれからきっと独りで辛かったんだよね。俺の事なんて思い出せないくらいに……」

「――!!」


 その瞬間、盟の両目からボロボロと涙が溢れ、その場に崩れ落ちてしまった。

 界が駆け寄り、盟を抱きしめる。


「俺の妹に話し掛けんな」


 界がイオに向けた睨みは、礼二にも負けない鋭利な視線であった。その鋭さが、透に孤児院時代の界を思い起こさせていた。