HEMLOCK‐ヘムロック‐

 泉は混乱した頭でやっと、界が自分を庇っていると悟るに至った。

それでも2人が何処かへ連れて行かれそうな――鞠 あさみの事件で2人が事情聴取に連れて行かれた時の様な不安に意識的に怯え、震えが止まらない。



「やっぱりいい人ですね。泉さんは」


 その声は勇の口調だった。アポロンは世の女性が見とれそうなくらいキレイな顔で優しく微笑んだ。


「でも紅龍會の者が聴いてたら間違いなくこの場で、」


 アポロンはピストルの形に手を構え、

「ズドン」

と言った。この緊迫の中、さすがの泉もビクッと肩をすくめた。

 思わず透が口を挟む。


「“紅龍會の者が”って、お前は紅龍會の者じゃないのか?」

「まぁね。“元、紅龍會”ってトコかな」


 そのセリフに界と盟は明らかに反応していた。まるで耳を疑うという表情。


「お前、さっき盟を迎えに来たって……」


 界がアポロンの方へ乗り出す様に聞く。反対に盟をアポロンから遠ざける様にさらに後ろに押しやる形になった。


「そう。俺はメイを迎えに行く為に紅龍會を裏切って日本に来たんだから」


 その言葉にようやく盟はアポロンを直視した。




「メイ、俺はイオだよ」