HEMLOCK‐ヘムロック‐

 突然の言葉にイオは目をしばたき、少女の笑顔からぱっと顔をそむけた。頬が林檎の様に真っ赤だった。


『ゆ、指輪?』

『うん。しろくて、ピカピカのほうせきがついてるの。イオの“め”みたい』


 目の事を言われたのは初めてではなかった。彼の瞳は薄い水色なのだろうが、青の色素が殆ど無く、まるで澄んだ銀色のようだった。
聞く所によると母の物でも父の物でもないらしい。

むしろイオは自分の両親が誰で、どこの国の人で、どんな人間なのかも良く知らないが。
とにかく、その辺によくあるような瞳ではないのだ。


『キレイだねぇ~……』


 イオはメイに言いたかった。「君の目の方がキレイだ」と。

そんなセリフ、まだ9歳の少年にはとても言えなかった。


 その時白衣を着た男が2人の元にやって来た。


『探したよ。こんな所に居たのかい? もう急がないと!』


 白衣の男がメイに手を伸ばした。それが2人のお別れの合図だった。

 “ココ”で大人には逆らってはいけないのだ。


『イオ。またあしたね』