HEMLOCK‐ヘムロック‐




 透と泉は礼二の会社から興信所にむかって歩いていた。(泉は仮病を使ってるので家に帰るのだが)

 その帰路には新宿公園があった。


「あ、」

「どうした泉?」


 泉の視線を辿ると公園内で車椅子に乗った老婆が独りで鳩に餌をやっている。


「前に界くんと礼二さんの会社から一緒に帰った時、あのお婆さんに会ったんだぁ」


 泉は自分から界の名を口にし、勝手にヘコんだ。
今2人にとって界と盟の話題は重すぎる。明日自然に2人と接する自信など全く無かった。

 それでも帰らない訳には行かないのだ。


「泉、行こう」


 透と泉は公園の前を過ぎて行った。







 その様子を鳩に餌をやっていた老婆がじっと見ていた。

 瞬間、餌を啄んでいた鳩達が一斉に飛び立った。後ろから男が近づいて来たのだ。


「パンドラ」


 老婆は声の主の方に振り向いた。そこには、あのアポロンが優しい笑顔で立っていた。


「寒かった?」


 老婆は顔を横に振った。表情は先程より微かに緩んだ気がする。


「ごめんね。またすぐ戻らなくちゃならないんだ」


 その言葉に、老婆の表情には影が落ちた。
そして悲しそうに先程泉達が居た場所を見つめる。