HEMLOCK‐ヘムロック‐

 今知った様な口振りで、あさみは言った。


「主はあなたを良く見ておられますわ。罪深きはあなただけではなく、あなたを陥れた“あの男”も等しく裁かれるべきなのです」


 教会のシスターが刑務所に、受刑者の為に祈りを捧げに行くという活動ならあさみも聞いた事があるが、あさみがカトリックというだけで拘置所にまで来てくれるものなのだろうか?
あさみは訝しがっていた。


「“あの男”って、彼、捕まったの?」


 あさみは探り半分、興味半分で聞いてみた。“あの男”――アポロンに対しての熱は冷めていたが、やはり自分を破滅に向かわせた男の事は気になった。

 しかしシスターは首を横に振った。


「だからこそ、あなただけこうしているのは不公平でしょう?」


 あさみとシスターの視線は絡まったまま沈黙した。
次に、シスターが口を開く。


「何故あなたはその男の為に尽くしたのですか?」


 何故かなんて具体的に説明できない。信じられないくらいに好きだったのだから。
恋とは時に、説明の付かない衝動的な行動を人間にさせる。


(好きだっただけで……?)


 あさみは理由を見つける為に彼との出会いに遡り、ポツリポツリと語り出した――。