HEMLOCK‐ヘムロック‐

 父が1人1人に当てた遺言書に理由が記されているかも。と礼二は自分の分の封を切った。が、それについては書かれていない。
ただ最後の一行は、

「どんな時も界と盟を頼む」

と記されていた。


(もしかしたら社長の事は界が父に直々に頼んだのかもしれない。
もしそうなら……、譲ってやってもいい。界が今までワガママを言った事なんてない。
もし、彼の望みなら兄として、叶えてやりたい。)


 それは、今までの彼の境遇を知る礼二だからこそ出た、同情とは違う、兄としての思い遣りだった。

勿論、彼だって今まで父の跡を継ぐ事を目標に、必死にやってきたのだ。本来、例え血が繋がっていたって容易く譲れる様な物ではない。

 しかし自分達には血の繋がりを超えた絆がある。礼二はそう信じていた。

が、次の日の界の発言でその気持ちは遂に抑えきれないモノとなってしまった。



「俺は継がねぇ……」

「今、何て言った? 界」


 それは次の日の葬儀当日の夜だった。ホテルの部屋で昨日の話を界から持ち掛けてきたのだった。


「俺はあの会社を継ぐ気は無い。本来兄貴がやるべきだ」

「でも、これは父の遺言だ。確かに社長は簡単に成れるモノじゃないが、優秀なお前なら……」