HEMLOCK‐ヘムロック‐

 兄弟3人と弁護士がテーブルを挟んで座る。


「こちらが故人、黒菱 灰仁様の遺言状となります。黒菱様は正式な遺言状の他、ご兄弟お一人づつに1通づつの遺言を遺されております」


 弁護士が計4通の封筒をテーブルに出した。


「読み上げさせて戴きます。まず、故黒菱 灰仁の名義である財産の1/2を長子、黒菱 礼二の物とする……」


 遺言状が読み上げられる間、3人はひたすら無言だった。
しかし、ある一行が3人の顔を上げさせ、弁護士は一気に注目を浴びる事となる。


「故人の経営していた『黒菱探偵社』の経営権、および社長相当の座を、次男、黒菱 界に譲る」


「「え?」」

 界と礼二の戸惑いの言葉は同時に上がった。


「どういう事ですか?」


「そのままの意味です。弟さんを社長にと、故人の意志です」


 流石の礼二も混乱した。そしてジワジワとショックが心に広がってゆく。


(父は自分ではなく、界を後継に選んだ?
実の息子である自分ではなく、血の繋がりのない界を?)


 3人は一言も交わさないまま弁護士を送り出し、その日は就寝した。


 礼二はひたすら何故? と頭の中で繰り返し、眠れなかった。